黒猫*溺愛シンドローム




――――…………

――……





まずは、廊下にて。



「風見先輩、お疲れさまで……あっ!」



生徒会室から出てきた、後輩らしき男の子は、



「お…お先に失礼しますっ」



私の姿を見つけるなり、顔を真っ赤にしてそそくさと走り去った。





そして、職員室。


課題を受け取った先生は、



「おっ。今日は風見も一緒だったのかぁ?」



ヤツを見て、驚きつつも楽しそうな笑みを浮かべると、



「あんまり“彼氏”に面倒かけるなよ?」



私の肩をポンと叩いた。




さらには、階段で。



「あ、歩くん。おつかれさまーっ。あらっ、そちらが噂の“彼女”?」



参考書を抱えた、知り合いらしき女の先輩と出くわして。



「仲よしねぇ。でも、“学校では”控えたほうがいいわよ?」



なぜか小声でアドバイス。










……これは、ほんの一例。


まだマシなほう。


噂と言うのは、本当に怖いもので。

勝手に誤解されて、誇張されて、捏造されて……


今じゃ、

私とコイツの“関係”は、学校内すべての人間の知るところとなってしまった。

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