黒猫*溺愛シンドローム
「……よしっ。できた。」
ぐるぐると。
何重にも巻き付けて。
王子様は、満足気ににっこり笑った。
男物のマフラーは、やっぱり私には長すぎて。
なんか…必要以上に首周りがごわごわしていて落ち着かない。
何より……
この香り。
香水なのか洗剤なのか…よくわかんないけど、
微かに香るのは、紛れもなくコイツの匂いなわけで。
こんなにダイレクトに伝わってくると、妙に意識してしまう。
マフラーの温もりと、
そこに染み付いた香り。
これじゃ、まるで、
本人に抱きしめられてるみたいじゃない。
そこまで考えて、たちまち顔がカーッと熱くなる。
私ってば、何考えて……
ダメだ。
こんなの、してちゃダメ。
気が変になる。
取ろう。
そう思って、マフラーに手をかけたとき……
「なんか、かわいーっ」
アイツがぽつりと呟いた。
「はっ…?」
「なんか、雪山の子供みたい。見てたら、ぎゅーっとしたくなっちゃった。」