黒猫*溺愛シンドローム
「ちょっ…離してっ」
……マフラーどころじゃなかった。
一瞬にして、
身体全体がコイツの香りと温もりに支配されて。
金縛りにあったみたいに動けなくなる私。
「うわっ。やっぱり身体も冷えてるね?」
「なっ…」
「明日からは、ちゃんとコート着てきたほうがいいよ?」
密着するカラダ。
腕の中にすっぽり包まれている私と、
そんな私の肩口に顔を埋めるコイツ。
ここは、まだ校内で。
遅い時間とは言え、いつ・誰に見られるかわからない。
また、こんなとこ誰かに見られたりなんかしたら…めちゃくちゃヤバイ。
それに、何より。
コイツは“変態”だ。
薄暗くて、人気のないこんな場所で。
抱きしめるだけで終わるはずがない。
ここで黙ったら負けだ。
きっぱり抵抗しなくちゃ!
……って思うのに。
身体が動かない。
それどころか……
「……え?」