黒猫*溺愛シンドローム




「最初の頃に逆戻り。
俺を異様に警戒して、また爪を立てるようになっちゃって。……辛かったなぁ。」



まるで、過去の失恋でも語ってるみたいだけど。

猫のこと、なんだよねぇ。

コイツの基準は、あくまで“カリン”なわけだ。



「……不安になっちゃったんだよね、きっと。
カリンのこと、嫌いになったわけでも忘れたわけでもないのに。」

「ちょっ…」


私の頬を包み込むようにして上を向かせると、



「浅海さんも、そうなんだよね?」



コツンと、私の額に自分のをくっつけた。

ち…近っ。


少しでも動いたら、確実に……

私、否定すらできないじゃない。



「ごめんね。不安にさせて。」



勝手に進んでいく話。



「浅海さんは、カリンと違って言葉もわかるし、
“学校”のこともわかってるから大丈夫だ、って、ちょっと甘えてた。」



この距離でしゃべらないでほしい。



「でも、ダメだね。
ちゃんと言葉でも態度でも示さないとわからない…よね?」


< 150 / 310 >

この作品をシェア

pagetop