黒猫*溺愛シンドローム
「最初の頃に逆戻り。
俺を異様に警戒して、また爪を立てるようになっちゃって。……辛かったなぁ。」
まるで、過去の失恋でも語ってるみたいだけど。
猫のこと、なんだよねぇ。
コイツの基準は、あくまで“カリン”なわけだ。
「……不安になっちゃったんだよね、きっと。
カリンのこと、嫌いになったわけでも忘れたわけでもないのに。」
「ちょっ…」
私の頬を包み込むようにして上を向かせると、
「浅海さんも、そうなんだよね?」
コツンと、私の額に自分のをくっつけた。
ち…近っ。
少しでも動いたら、確実に……
私、否定すらできないじゃない。
「ごめんね。不安にさせて。」
勝手に進んでいく話。
「浅海さんは、カリンと違って言葉もわかるし、
“学校”のこともわかってるから大丈夫だ、って、ちょっと甘えてた。」
この距離でしゃべらないでほしい。
「でも、ダメだね。
ちゃんと言葉でも態度でも示さないとわからない…よね?」