黒猫*溺愛シンドローム
「だから、」
急に声のトーンが変わったかと思うと、
「つき合ってほしいんだ。」
風見歩は、真剣な顔で私を見つめた。
「……は?」
「今までは見てるだけで楽しかったから、それで満足だったんだけど……
やっぱり、こうして近づいちゃうとダメだね。」
困ったように笑う。
私は意味がわからない。
「気づいちゃったんだ。」
「……何を?」
「俺、浅海さんじゃなきゃダメだと思う。」
「はっ?」
また。何を言い出すんだ、この男は?
「初めてなんだ。
人間の女の子に興味を持ったの。」
「……はい?」
「自分のものにしたいって思った“人間”は初めてなんだ。」
「えっと…」
「触りたいって思って、
抱きしめたいって思って、全部欲しくなった。
だから……
俺のものになって?」
腰をかがめて、ねだるように瞳を覗き込むと、
「……ちょっ…」
王子は私にキスをした。
そっと。まるで猫に触れるみたいに。