黒猫*溺愛シンドローム
――朝。
「おはよう、歩くん。」
「風見先輩、おはようございます!」
教室にたどり着くまでに、何人もの女の子に声をかけられる。
当然、知っている子もいれば知らない子もいる。
名前がわかる子とわからない子がいる。
だけど、挨拶をされたら返すのが礼儀でしょ?
だから、俺はみんなに笑顔で返す。
それはもう習慣みたいなもの。
“好意”を向けられれば、自然と“笑顔”が出てくるものだ。
……ちょっと疲れるけど。
「おはよう」
教室の扉を開けて、中に入って…ようやく一息。
待ち構えていたかのように、女の子たちが集まってくるけど……
クラスメイトだから。
名前を知ってるだけ、だいぶ楽。
順番に挨拶を交わしながらも、俺は無意識に1人の女の子を探し求める。
……あ。いた。
窓際の一番後ろの席。
まさにぴったりな場所。
見た瞬間、さっきまでとは違う“笑顔”が生まれるのがわかった。