黒猫*溺愛シンドローム
「美味しい?」
私は基本、朝食は“食べない”派。
朝からものを食べるなんて絶対に無理!…なのに。
「朝ご飯はちゃんと食べないとね?」
ほとんど無理矢理、強制的に席につかせられ、フォークを握らされてしまった。
人間の体ってのは不思議なもので。
「食べたい」なんてこれっぽっちも思ってないのに、
匂いに反応して“グー”とか鳴っちゃうわけよ。
不覚にも。
だから、仕方なく……
ちびちびと口に運ぶ私を、向かいの席でじーっと見つめる王子様。
……って言うか、
そんだけ見られてると食べづらいんですけど。
「……カリンもさ、」
ぽつり、と聞こえた単語。
……出たな。
「毎朝、“美味しい”って言って、残さずきれいに食べてくれるんだ。
ホント、作り甲斐があるって言うか…こっちが嬉しくなっちゃうよね」
あーあ…すんごい嬉しそうに笑ってるよ。
つまり、私にもそれを期待している、と?
って言うか、まず、
アンタのカリンは「美味しい」って言わないでしょ?
猫、なんだから。