黒猫*溺愛シンドローム
「カリンも、最初はそうだったんだよね。」
教科書を盾にして安心したのか、彼女は再び机に伏せてしまったけど……
授業の準備をしつつ、俺は話しかける。
「カリンも、うちに来たばかりのときは全然俺になつかなかったんだ。」
両親や妹にも、だけどね。
「仔猫のくせに、全然可愛げがなくてさ。
呼んでも来ないし、かまおうとしようもんなら引っ掻くし。」
おかげで毎日傷だらけ。
いつまで経ってもうちに馴染まなくて、ご飯もあんまり食べないから全然大きくならないし……
家族みんなどうしたらいいのかわからなくて、“親元に返そうか”って話が出たくらい。
でも、俺は諦めたくなかった。
どうしてもカリンの“飼い主”になりたかった。
だから、すごく頑張った。
「でも今は、俺があげたご飯しか食べないし、
俺にしかブラッシングさせないし、甘えないし、一緒に寝ないんだよ?」
それはもう徹底している。
「だから……」