黒猫*溺愛シンドローム
くるっと振り返って。
「ねーってばっ!修ちゃん聞いてるっ?」
くるみは、キッチンにいる修司に呼び掛けた。
……そうだ。今の、この状況をすっかり忘れてたよ。
「あーっ?」
くるみに気づいたのか、
フライパンを握る手を止めて、こっちに視線を移して。
「何だって?全然聞こえないんだけど?」
修司は、いつもより大きな声で聞き返した。
ジャージャーと何かを炒めるような音と、稼働中の換気扇の音。
あと数分で炊き上がる炊飯器の音。
そして、こっちでくるみがつけてるテレビの音。
聞こえないのも当然、だ。
「だからぁ…「って言うか、お前ら少しは手伝えよ!」
もう一度言い掛けた、くるみの言葉を遮って。
「なんで帰ってきて早々、俺がお前たちの夕飯を作らなきゃなんないわけ?」
さらに大声を張り上げた。
「普通は逆だろ?つーか、自分たちで何とかしろよ。お前ら女だろ?」