黒猫*溺愛シンドローム
浅海 嵐士(アサミ アラシ)。
21歳。
4つ上の、私の兄。
昔から、変わった人だとは思ってた。
勉強もスポーツも。
たいした努力もせずに、何でもひょいとこなしちゃって。
明るく陽気でケンカも強いから、友達や子分は数知れず。
だけど、群れるのは嫌いで、基本的に単独行動。
フラッと1人でいなくなっては、とんでもないことをやらかす。
読めないし、掴めない。
家族でさえも理解できない…そんな人。
言ってみれば、
天才=変人を地で行くような人間?
それが爆発したのは、3年前…なんだけどね。
3年前――
大学受験を控えた時期。
お兄ちゃんは、両親に土下座した。
「大学に進学したとして、4年間でかかる費用を今すぐまとめて貸してほしい」って。
「それを使って、世界を見に行きたいんだ」って。
……許す親もどうかと思うけど。
医学部だって余裕、と言われていたお兄ちゃんは、
そのお金を持って、卒業と同時に家を出て……
今の今まで音信不通。
帰ってきたと思ったら…これだもん。