黒猫*溺愛シンドローム




「よし、起きたな。」


未だ寝呆け眼の私を見下ろして、


「ほらっ、さっさと起きて支度しろ!親父たちなんてとっくに出かけたぞ?…ったく。相変わらずだよなぁ。」


やれやれと言うように、お兄ちゃんは肩をすくめた。


「出発前、俺があんだけ鍛えてやったのに全然ダメじゃん。今も遅刻三昧なんだって?」

「なっ…」

「また“ピーコ”借りてくるしかないかな…」

「や…やだっ!それだけはいやっ!!」

「じゃあ、起きろ。」


容赦なく。
私の腕を掴んで、無理矢理部屋から連れ出した。




……そう。

この人は、私とは正反対。

朝にはめっぽう強い。

どれだけ夜遊びして帰ろうが、毎朝必ず同じ時間に起きていた。

恐るべし体内時計の持ち主で、我が家の“目覚まし時計”と呼ばれた男。



だから、私も大いにお世話になった。

家を出る前、私の朝寝坊を克服させようと頑張ってくれたことには感謝してる。


でも……



本物のニワトリ(ピーコ♂)を使った“トレーニング”だけは、


さすがに死ぬかと思った。

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