黒猫*溺愛シンドローム




「風歩ちゃん!」



廊下のど真ん中。

背後から聞こえた声に、思わずビクッと反応してしまった。

それは明らかに、私に向けられているわけだけど…



「…あ、待ってよ!」



振り返りたくない。

できれば、聞かなかったことにしたいっ。

つかつかと、早足でその場を去ろうとしたものの…



「風歩ちゃん、ってば」


「わっ…」



ぐいっと掴まれた腕。

そして、



「なんで無視するの?」



覗き込んでくる瞳。


……うっ。虚しくも、簡単に捉えられてしまった。



「なかなか教室に戻って来ないから、心配してたんだよ?」


「……っ」


「せっかく、最近はいいペースで授業に出てると思ってたのに…なんでここに来てサボるかなぁ?」



……お説教?

しかも、いつの間にか私を廊下の壁に追いやって、腕の中に囲うみたいな格好になってるし。


行き交う生徒たちがみんな見てるよ…。



「風歩ちゃん?聞いてる?」


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