黒猫*溺愛シンドローム
……さっきから。
「風歩ちゃん」「風歩ちゃん」って……
恥ずかし気もなく、鬱陶しいくらいに人の名前を連呼してるのは……
「俺、今からちょっとだけ生徒会に行かなきゃいけないんだけど…」
綺麗なお顔を申し訳なさそうに歪めて、
「すぐ終わると思うから、少しだけ待っててもらえるかな?」
おねだりするみたいに首を傾げる“王子様”。
……なんか、廊下のあちこちから黄色い声が聞こえるんですけど。
しかも、さっきより通行人が増えてる気が……
ほぼ“見せ物”状態。
さすがに、これにはだいぶ慣れたけどさぁ。
「……風歩ちゃん?」
……っ。
心臓が、ドクンと跳ね上がる。
だって……
「終わったら、一緒に帰ろうね?」
にっこり微笑む、その笑顔はいつもと同じ。
近すぎる距離も。
私を映すその瞳も。
全てに対して、免疫はできてるはず。
なのに……
私はなんで、
呼び方ひとつでこんなに動揺しちゃってるの?