黒猫*溺愛シンドローム



「名前で呼べ。」




――あの日。


お兄ちゃんにそう言われてから、アイツは私を名字では呼ばなくなった。


どうせたいした理由じゃないんだから、別に真に受けなくていいのにさ。


素直って言うか、忠実って言うか…


まぁ、お兄ちゃんに逆らっても面倒なことになるだけだし?

その選択は間違ってないとは思うよ?


でもさぁ……






「おっ。“風歩ちゃん”おかえりぃ」



生徒会室へと消えたアイツと別れて、渋々ながらも教室に戻った私。


ドアを開けた途端、飛び込んできたのは……



「歩には会えたか?」



にやにやと。

小憎らしい笑みを浮かべて私を見ている。

……コイツ、絶対に楽しんでるな。



「アイツ、ずっと“風歩ちゃん”を探してたからさ。会えたなら…「うるさいなぁ。さっさと部活に行きなよっ。……ポチ。」


「なっ…ポチ言うなっ」




カアッとなって、立ち上がったダイスケを無視して自分の席に着く。

……まったく。

コイツにまで言われたくないわ。



って言うか、


なんで“ちゃん”付け?


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