黒猫*溺愛シンドローム
「今帰り?」
聞き覚えのある声に、慌てて振り返ってみれば……
「先輩……」
ここは昇降口。
靴箱にもたれかかって立っていた私。
もう遅い時間だし、人が来るなんて全く思ってなかったわけだけど…
私の学年のとは反対側の“3年生”の領域から、その人はひょっこり現れた。
「こんばんわ。…って言うか、久しぶり?」
にっこりと、屈託のない笑顔を向けられて。
私もつられて頬が緩む。
「こんばんわ。…って、
こんな時間まで、学校ですか?」
「あー、うん。今日はちょっと進路相談で。
風歩ちゃんこそ、どうしたの?珍しいね。」
「私は……」
ここにも、いた。
私を名前で呼ぶ人が。
「ああ、そっか。“彼氏”を待ってるんだね?」
「へっ?」
「くるみが言ってたよ。
すっごいラブラブなんだって?」
「……っ」