黒猫*溺愛シンドローム



「こんばんわ。」



王子様の視線は、私の隣に定まって。

そのまま。ペコリと頭を下げた。


……ん?



「あー、歩くん!久しぶり。」



先輩も、それに応えて手なんて上げちゃってるけど…


牧野…って、確か先輩の名字だよね?

何?ここ、知り合い?



「珍しいですね。こんな遅くまで。」


「ははっ。ちょっと志望校のことでさ。」


「いよいよ受験本番ですもんね。先輩は…そこの国立大でしたよね?」


「うん。学部で迷っちゃって…」



なんだ?このフレンドリーな会話。

けっこう近い関係??



――ブーッ。



2人のやりとりを観察する中、鳴り響いたのは…



「…あ。ごめん。俺、そろそろ行くわ。」



先輩のケイタイ。

ディスプレイを確認して、外へと向かう先輩。



「くるみちゃんによろしく。」



急ぐ先輩を、にっこり笑って送り出す王子。


手を振って、走り去る先輩。










「さ。俺たちも帰ろうか。」



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