黒猫*溺愛シンドローム
「ありがとう。」
……今日も、また。
“王子様”は、笑顔を振りまいていらっしゃる。
「ごめんね。」
謝るときでさえ、微笑。
……よくもまぁ、そんなに安売りできること。
誰かれかまわず、とにかくにこやかに。穏やかに。
“お礼”と“お詫び”は決して忘れないし。
さっすが。
私には、絶対に真似できないな。
あーあ。佐藤さんってば、今日も頬染めてるよ。
毎日毎日…。
クラスメイトなんだからさ、いい加減慣れようよ?
うわっ。中村くんまで?
あの子、彼女いたよね?
男まで悩殺できちゃうとは……あっぱれだ。
そんな興味深い光景を、
もう少し観察してみたい気もしたけど……
睡魔に負けた私は、机に顔を伏せた。