黒猫*溺愛シンドローム
「あ、浅海さんおかえり。」
英語が終わって。
ついでに数学も現国も終わって。
あとは帰るだけ、という時間になって、彼女はようやく戻ってきた。
ぼーっとした顔。
微妙に寝癖のついた髪。
制服のシワ具合からして、保健室で寝ていたに違いない。
保健の先生は、定年間近のおばちゃんだけど、なぜか浅海さんに甘いんだよね。
娘に似てる、とか何とか。
彼女のサボりの片棒を担いでるのは、きっとあの先生に違いない。
「おーい、浅海さん?」
俺の挨拶を素通りして席についた彼女。
無視してるって言うより、まだ完全に覚醒してない感じ?
鞄を開けたままフリーズしてるから、とりあえず手伝ってあげた。
「……どうも。」
小さく聞こえた声。
びっくりして彼女を見れば…やっぱり、目覚めてないよね?
とろーんとした瞳で、今にも瞼がくっつきそうだ。
……か、可愛い。