黒猫*溺愛シンドローム
「あ、そのへんは俺がやるからいいよ。」
本棚の上のほう。
私の身長じゃちょっと厳しい位置だけど……不可能ってわけじゃない。
背伸びをして、何とか作業をこなしていたのに…気づかれてしまったらしい。
「大丈夫。……ほら、脚立もあるし。」
すぐさまこっちに来ようとする風見歩を制して、私は視界に入ってきた脚立を指差した。
「でも……」
「いいから。あんたはそっち。私はこっち担当。ね?」
資料の大半が、なぜか本棚の高い位置にある。
全部を任せるわけにはいかないし、任せていたらいつまでたっても終わらない。
私は、一刻も早く終わらせて帰りたいの。
納得できない様子のヤツを無視して、私は脚立を組み立てた。
……のはいいけど。
「……」
どうしよう?意外に高くない?
私……
高いところ、ダメなんだよね。
「……浅海さん?」