黒猫*溺愛シンドローム
たかがこのくらい、って感じの高さなんだけど。
極度の“高所恐怖症”な私は、30センチだろうが50センチだろうが、地上から離れた時点でダメなんだよね。
「どうしたの?」
気がつけば、私は脚立の前でフリーズしていて。
そんな私を、心配そうな瞳が覗き込んでいた。
……って、顔近っ。
「な…なんでもないっ」
急いで離れて、脚立に足をかけた。
またコイツに何かされるくらいなら、高いところのがマシ。
そう思って、ギシギシと、勢いよく踏み出した……のもつかの間。
「あれ……?」
グラリと傾いた身体。
え……?
「危ないっ!」
スローモーションみたいに、ゆっくり視界が回っていく。
……もしかして、組み立てが甘かった?
低いとは言え、落ちたらそれなりに痛いよね?
なぜか冷静な頭で、痛みを覚悟した瞬間。
ガシャーン。
大きな音がして、脚立が倒れた。
私は……?