黒猫*溺愛シンドローム




ふいに、絡み付いていた腕の力が弱まった。


……終わり?


ほっとしたのも一瞬で。



「……わっ。」



くるっと向きを反転させられて……



「ちょっ……」



気づいたときには、今度は正面から抱きしめられていた。



「せっかくだから、普通に抱きしめさせて?」



甘い声が降ってきて。


すっぽりと包まれてしまった私の身体。


頭と背中に回された腕。


頬に当たるのは、温かいけど固い感触。


耳に響く鼓動。


……さっきより、ひどくなってない?



「うん。やっぱりこっちのがいいね。」



満足気な声に、反論すらできない。



……もう、ヤダ。


なんで、こんなことになるわけ?


平気でこんなことするコイツもコイツだけど、

なんで私は、本気で抵抗できないの?


蹴飛ばすなり殴るなり…いつもなら平気でできるのに。


なんで、おとなしく“されるがまま”なの?


自分自身が一番怖いよ……



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