黒猫*溺愛シンドローム
「……あのさ、」
抱きしめたままの体勢で、ふいに私の顔を覗き込んだ“変態”王子。
……ち、近すぎでしょ?
その距離、わずか十数センチ。
気を抜けば、触れてしまいそうな……
「ついでだから、キスもしていい?」
首を傾げて、まるでおねだりするみたいに私を見つめる瞳。
それは、羨ましくなるくらいに綺麗なわけだけど……
「はあっ?」
“ついで”って何?
何の“ついで”?
「2回目だし、別にいいよね?」
「そういう問題じゃな……」
私の返事なんて、コイツの耳には全く届いていないようで……
ゆっくりと、でも確実に近づいてくる…恐ろしく整った顔。
睫毛長っ。なんで、こんなに肌がキレイなの?
……なんて、観察してる場合じゃなくて!
「……やっ」
そんなに何度も奪われてたまるかっ。
あれが……この前のが、私の“ファーストキス”だったんだからねっ?