黒猫*溺愛シンドローム
あと数センチで確実に触れる……そんなときだった。
ガチャッ。
ドアノブを回す音がして。
「あれっ?堀井先生、鍵閉まってますよ?」
廊下から聞こえた人の声。
それを聞いて、王子の動きがぴたっと止まった。
そして、近づいていた顔が離れていく。
……私、助かった?
「え?おかしいな。風見がいるはずだけど…」
「先生、またアイツに何か頼んだんですか?
風見は生徒会もあるし、いろいろ忙しいんだから、あんまり煩わせないでやってくださいよ。」
この声は、確か……
堀井先生と、地理の…名前は忘れたけど、メガネかけた先生だ!
何で、ここに?
って言うか、なんで鍵が閉まってるの?
いつの間に??
隣にいる王子を見上げてみれば……
未だ私をしっかり抱き止めたまま、
息を潜めて、ドアのほうを窺っている様子で……
「人聞き悪いなぁ。
今日は、私が頼んだわけじゃありませんよ。
風見自ら、“手伝うことはないか”って言ってくれたから……」
……はいっ?