黒猫*溺愛シンドローム




「……浅海さん?」



放課後。


さっさと帰るべく、鞄に荷物を詰め込んでいた私の前にできた影。



「帰ろうとしてるところ、悪いんだけど……」



顔を上げなくてもわかる。


毎日、嫌でも耳に入ってくる声だから。



「化学のプリント、今日出せるかな?」



申し訳なさそうに、私に話しかけているのは……



「出してないの、浅海さんだけなんだよね。

今日中に集めて、中原先生のところに持って行かなきゃいけないんだけど……」



「……は?」



「あの先生、5時までしか待ってくれないから。」



化学のプリント?


……あぁっ!



「あれって、今日までだっけ?」



すっかり忘れてた。


って言うか、
基本的に授業にはあまり出てないし、出てもほとんど聞いてないし。


でも、この前何か配られてたような……


慌てて机の中を探る私に、



「……もしかして、忘れてた?」



さすがの王子も、呆れたようだ。


< 5 / 310 >

この作品をシェア

pagetop