黒猫*溺愛シンドローム
「……浅海さん?」
放課後。
さっさと帰るべく、鞄に荷物を詰め込んでいた私の前にできた影。
「帰ろうとしてるところ、悪いんだけど……」
顔を上げなくてもわかる。
毎日、嫌でも耳に入ってくる声だから。
「化学のプリント、今日出せるかな?」
申し訳なさそうに、私に話しかけているのは……
「出してないの、浅海さんだけなんだよね。
今日中に集めて、中原先生のところに持って行かなきゃいけないんだけど……」
「……は?」
「あの先生、5時までしか待ってくれないから。」
化学のプリント?
……あぁっ!
「あれって、今日までだっけ?」
すっかり忘れてた。
って言うか、
基本的に授業にはあまり出てないし、出てもほとんど聞いてないし。
でも、この前何か配られてたような……
慌てて机の中を探る私に、
「……もしかして、忘れてた?」
さすがの王子も、呆れたようだ。