黒猫*溺愛シンドローム




「あ、浅海さん!」



昼休みが終わって。


教室に戻ってきた彼女に、すかさず声をかける。



「あのさ……」



近寄ろうとした瞬間……



バッ!



「……わっ。何?」



なぜか、出現した……傘?


机と机の間に、まるで立ちはだかるように開かれた、透明なビニール傘。


干す…わけじゃないよね?

今日は、気持ちがいいくらいの青空だし。



「急に何?傘は人に向けて開いたら危ないよ?」



こんな狭いところにあったら邪魔だしね。


たたもうと手を伸ばすと……



「触んないでっ」



声を上げる彼女。



「えっ?」



びっくりして顔を上げれば、



「それ以上近づいたら、これも鳴らすからねっ」



怖い顔で俺を睨みながら……って言っても、全然可愛いんだけど、

彼女はさらに何かを突き出してきた。それは……



「……防犯ブザー?」



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