黒猫*溺愛シンドローム







―――……

―――…………




……最悪だ。


気分が悪い。


イライラどころじゃない。


うまく表現できないけど、こんな気持ちは初めてだ。


さっきの…2人の会話が頭から離れないんだ。


彼女のことを“風歩”って呼ぶ男。


その男のことを、彼女は“修ちゃん”って呼んで……


あんな笑顔を向けて、夜に2人で会うような仲で……


どうしよう?


これってピンチ?試練?


あの2人は、つき合ってるわけじゃなさそうだけど……


“好き合ってる”可能性はあるよね?


あー…盲点だった。


カリンの場合は、
俺が手放さない限り、もう一生俺の猫で。


“飼い主”として認められている以上、誰かに盗られる心配はない。


でも、彼女は……


人間は動物とは違うから。


たとえ手に入れたとしても、気持ちが変われば簡単に離れて行ってしまう。


……いや。まだ手に入れてもいないんだけどさ。


“所有”することはできないんだよなぁ……



大きくため息をついて、前に踏み出した。


そんなとき―――



「うわっ。」


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