黒猫*溺愛シンドローム
「ったぁ……」
そこはちょうど、廊下の曲がり角。
いつになくぼーっと歩いていた俺と、
慌てて走ってきていたらしい相手。
曲がりかけたところで、見事にぶつかってしまったようで……
「ごめんね!大丈夫?」
俺への衝撃はほとんどなかった。
でも……
「大丈夫?立てる?ケガは……」
俺は手を差し出した。
ぶつかってしまったのは見るからに小柄な女の子で。
尻餅をつくような格好で倒れていたから。
「大丈夫っ。こっちこそ、ごめんね?
ちょっと急いでて…」
腰のあたりをさすりながらも、顔を上げた彼女。
躊躇いもなく俺の手を掴んで、勢いよく立ち上がった。
……あ、大丈夫そう。
よかった。
ほっと胸を撫で下ろしていると……
「……アレ?」
その子は、なぜかじーっと俺を見つめていて。
「“王子様”の歩くんだ!」
パアッと顔を輝かせて、にっこり笑った。