黒猫*溺愛シンドローム
……不思議な子だ。
「歩くんはみんなの“王子様”だけど、
くるみの“王子様”は新ちゃんなの。
だから、ごめんね?」
謝られる意味がよくわからないけど…まぁ、いいか。
俺は笑顔を返しておいた。
“新ちゃん”って言うのが彼女の彼氏…なんだろうな、きっと。
変わった子だけど、考え方は嫌いじゃない。
って言うか、俺もそういうふうに言われてみたい。
いいなぁ、“新ちゃん”。
浅海さんがそんなこと……言うはずないよね。
いや、でも、
“修ちゃん”には言うのかな?
彼氏じゃなくても、何かしら“特別な存在”ではあるんだろうし……
はぁっ…。
忘れかけていた嫌なことをまた思い出してしまった。
もう、今日は帰ろうかな?
生徒会、サボろう。
「じゃあ、俺はこれで…」
一応、“くるみ”ちゃんに挨拶して、その場を去る。
……つもりが、
「待って!」
呼び止められてしまった。
「くるみね、歩くんにお話があるの」
「話?」
「うん。
風歩ちゃんのことっ。」