黒猫*溺愛シンドローム
「“幼なじみ”なの。」
廊下の一角。
自販機の側の、ベンチ。
缶ジュースのプルトップを開けながら、くるみちゃんは言った。
「風歩ちゃんとくるみと……修ちゃん。」
「……へっ?」
「同じマンションで生まれ育って、幼稚園のときから仲良しでね。
この際だから、大学もみんなで同じとこに行こうか?って話してるんだよ」
嬉しそうに微笑む彼女。
幼なじみ?
でも……
「浅海さんと“修ちゃん”はつき合ってるんじゃないの?」
もしくは“好き合ってる”とか。
“幼なじみ”にはよくある話だもんね。
「えぇっ?まさか。」
聞くなり、飲んでいた缶を落としそうになったくるみちゃん。
そんなに驚かなくても……
「修ちゃんは、風歩ちゃんとくるみにとっては“お兄ちゃん”みたいなもんだよ?」
「“お兄ちゃん”?」
「うん。修ちゃんは昔からしっかり者だから。
手のかかるくるみたちの面倒をみてくれてるの。」
嘘を言っているようには見えない。
だけど……
「それに、修ちゃん彼女いるよ?」