黒猫*溺愛シンドローム
「さあ、帰ろうか。」
HR終了後。
私の手は、鞄を掴むよりも先に、横から伸びてきた掌によって包み込まれた。
「……は?」
見上げれば、極上の笑顔。
なんか、やたら周りの“女子の”視線が痛いんですけど……
しかも、意味不明。
なんで、一緒に帰らなきゃいけないわけ?
さも約束してたみたいに……って、そうだよ。
「私、今から“大事な”用事があるのっ」
強く言って、握られていた手を振り払う。
そう。私にだって予定と言うものがあるんだから。
いつもいつも、好き勝手に振り回されてたまるもんか。
さっさと帰ろう。
立ち上がって、教室を出るべく一歩踏み出したとき……
「くるみちゃん、でしょ?」
後ろから聞こえた声。
「へっ?」
思わず振り返ってしまった私に、
「ごめんね。俺が彼女に頼んだんだ。」
申し訳なさそうに謝りつつも、明らかに嬉しそうな笑顔が向けられた。