黒猫*溺愛シンドローム
「そんなわけだから…まずは家の問題からクリアしないとね。さぁ、着いたよ。」
「……へっ?」
気がつけば、そこは閑静な住宅街で。
目の前には、一軒家。
……うわぁ。大きい。
って言うか、なんかめちゃくちゃお洒落な感じ。
白い壁に、落ち着いた紺色の屋根。
綺麗に手入れされた広い庭の奥には、ガラス張りのテラスまで見える。
ここって……
「俺の家。」
王子様はにっこり笑った。
……だよね。だって、表札が出てるもんね。
「どうぞ。入って?」
繋いでいた手を引いて、私を中へと促す。
「家族にも紹介したいし、何より、カリンに会ってほしいから。」
「はっ?」
「たぶん、今の時間ならいると思うんだよねぇ……」
「ちょっ……」
「ああ。母親には言ってあるから、大丈夫だよ。」
「はっ?」
勝手に進んでいく話。
私の意思は完全に無視されたまま、風見家に足を踏み入れることとなった。