黒猫*溺愛シンドローム




うっかり寝入ってしまったあの日から、動く度に手首でチリンと音を立てるもの。



「それ、浅海さんにプレゼント。」



目覚めた私に、アイツは言った。



「可愛いでしょ?カリンとお揃いだよ。」



それはもう、嬉しそうに。


その笑顔を無視して、直ぐさま外そうと試みた私。


でも……



「何、コレ?なんで取れないの?」



きつく締められた結び目をほどけるわけもなく。


急いでハサミを取り出したものの、



「……呪われちゃうよ?」



無邪気な…でも、恐ろしい一言が私の動きを止めた。



「はっ?」



「それ、“自然に”切れるまでは黙ってつけてないといけないんだって。

バリだったか、アジアのどこだかの神様が宿ってるらしいから、無理矢理ハサミで切ったりなんかしたら……」



見るからに“手作り”の“民族的な”工芸品。


話に信憑性がありすぎた。



「願いは俺がかけておいたから。叶ったら外れるはずだよ。」



……まさに、“手錠”?


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