黒猫*溺愛シンドローム
「あ…あんたは、こういうの慣れてるのかもしれないけどっ……」
もう、限界。
耐えきれなくなった私は、なんとか声を絞り出す。
ヤバイ……涙出てきた。
「わ…私は慣れてない…って言うか、初めてなの。だから……」
彼氏なんていたことないし。
当然ながら、こんな状況に陥ったことすらない。
お願いだから、もうやめて。
そう言おうとしたのに……
「俺も、だよ?」
きょとんとした顔で、言われてしまった。
「……へ?」
「俺も、浅海さんが“初めて”」
「……は?」
あんなにモテて、常に女の子に囲まれてるのに?
って言うか、何より、慣れすぎでしょ?
今まで私にしてきたことの数々。
あれが“初めて”だとは到底思えない。
「さっき、母さんも言ってたでしょ?“家に女の子を連れてきたことない”って。」
確かに、言われたけど……
「彼女なんていたことないし、欲しいとも思わなかったんだよね。……浅海さんに会うまで、は。」