黒猫*溺愛シンドローム
「ほら、カリン。浅海さんだよ?」
身体を起こした私の前には、にっこり微笑む王子と……その腕に抱かれた黒猫。
「長くて深いつき合いになる予定だから…仲良くしてね?」
“ご主人様”の言葉を理解しているのか、確認するように王子を見てから、
“カリン”は私のほうに視線を移した。
じーっ……
まさに、そんな感じ。
まるで観察するような…品定めするような瞳。
……まあ、猫って大概、こんなふうに人間を見るもんだけどさ。
でも、思わず見つめ返してしまった。
ふぅん……
これが“カリン”ねぇ。
毛並みも綺麗だし、ちゃんと“飼われてる”感じ?
可愛いっちゃ可愛いけど……なんか……
「ん?カリン、どうかした?」
……無言で見つめ合うこと、数分。
ふいに私から視線をそらして、王子の腕から抜け出した“カリン”。
そのまま、ドアのほうへと向かう。
「外、出る?」