黒猫*溺愛シンドローム
「さ。おいで。」
屋上に足を踏み入れて、
適当な位置に腰を下ろした風見歩は、
にっこり微笑んで、私に向かって両手を広げた。
「……はっ?」
何?何?何なわけ?
ぽかーんとしたまま立ち尽くす私を見て、
「だから、“抱っこ”。
ひなたぼっこ、するんでしょ?」
王子様は、不思議そうに首を傾げた。
「はあぁっ?」
“抱っこ”だぁ?
何がどうなってそうなるわけ?
百歩譲って、“ひなたぼっこ”はよしとしよう。
今日はこんなにいいお天気で、冬とは言えない暖かさだもん。
ここは、絶好のスポットだと思う。
だけど……
「カリンはさ、」
私の冷ややかな視線なんてなんのその、全く動じないのが風見歩という男で。
「カリンはいつも、俺の膝の上でひなたぼっこして…気持ちよさそうに眠ってるよ?」
……出たよ。“カリン”。
「だから、ホラ。
浅海さんも、膝でも肩でも腕でも…どこでも好きに使っていいから。」