黒猫*溺愛シンドローム
“カリン”=黒猫(♀)
風見家のペット。
王子様は、人間の女の子よりも猫が好き。
その溺愛ぶりは半端じゃない。
“欠点”はそこだ。
すべての基準は、猫。
優先するのは、猫。
愛する対象は、猫。
だから、
モテるにも関わらず、今まで“彼女”がいたことがないと言う。
“人間の”女の子には興味がなかった、と。
なのに……
「浅海さん?早くおいで。ぽかぽかで気持ちいいよ?」
動かない私に差しのべられる掌。
たぶん、それを掴むことができる“人間の”女の子は私だけだと思う。
みんなが羨むその特権。
でも、私は全然嬉しくない。
「遠慮しなくていいから。」
触れそうになった指先を、私は慌てて振り払う。
「結構ですっ。」
思いっきり睨みつけて、冷たく言ったはずなのに……
「……相変わらず、可愛いよねぇ。」
にこにこしてるし。
「カリンそっくりだ。」
……そう。
そんな無茶苦茶な理由で、
私は王子様の唯一の“女の子”にされてしまった――