ただ君が好きで、

『あ…』


下を見ると走る雪菜の姿が目に入った。


って事はあの人だかりは…


窓枠を握りしめその一点だけを見つめると、そこには名前なんて忘れた雪菜の彼氏が立っていた。


そいつは雪菜を見つけるとすぐに抱きしめた。


周りに人も多い、でもためらいもなく雪菜を抱きしめて笑うあいつを見て、俺はまたため息ついた。


運動が得意、整った顔。

あいつは男から見てもそんな奴。
それに…


あいつは雪菜に伝える勇気がある。

あいつは雪菜に触れる権利がある。


俺はこの時点で、あいつには勝ててないんだろうな。





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