ある男の人生
生きること
「人生とは何か」
 命題などと大袈裟なことではなく、常に脳裏に渦巻いていた。
生きる為に、生きる為の何かを探し探して。
 生きる為に、それらしき何かを見つけ見つけて。
 そうして、ここまで生きてきた。
 生きるには、意義が必要だった。
 毎日漠然と、ただ漠然と生きたくは無かったのである。

 私には、いや、私は理由を欲していたのだ。
 そうでなければ、生きる自信が無かった。
 虚であることから目を背け、実でありたいと。
 魂の重さを秤に掛けられる世の中に辟易しながらも、自分は価値のある人間との評価を望んだ。
 私にとって生きることは、辛く苦痛でしかなかった。
 今も思う、「よくもまあ生き続けてきたものだ」と。
 唯一つ生きる意義、と言うよりも
「生きる意味」
があった。
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