オリオールの乙女

「逃がさんぞ!」

細い路地裏で、ノエルは挟み撃ちにあってしまった。ノエルは慌てて背を向けて走り出した。しかし、どちらにせよ後ろにも、竜のような生物と男がいる。そんな時だった。

「こっちだ!」

どこからともなく一人の青年が現れ、ノエルの腕を掴んだ。彼はノエルを引きつれ小さな竜のところへ走った。青年は強引で足が速く、ノエルは思わず足がもつれそうになる。

「あなたは!?」

「心配するな、俺についてこい!」

青年の瞳は吸い込まれそうなほど漆黒で、肌も浅黒く、髪の毛も真っ黒だった。ノエルが今まで見たことのない種族だったし、彼がルカッサの人間でないことは一目瞭然だった。

しかし、彼は遥か昔からのこの地の住人であるかのように細い路地を器用に走りぬけた。

ある家に立てかけてある長い長いはしごを登るよう、ノエルに言った。
ノエルは躊躇うことなくはしごを登ってゆく。彼はノエルが落っこちてしまわないよう、あとから登り始めた。

「そう、上手だ」

彼は言った。ノエルは、実際この状況をとても面白がっていた。なんとスリリングだろう。ノエルに恐怖心はなかった。どんどんと地上が遠くなっていくにつれ、空がうんと近づいてくる。

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