オリオールの乙女
「マジャッラ!」
青年が呪文のような言葉を発すと、先ほどの小さい竜が屋根の下に現れた。
「飛び乗れっ!」
「きゃーっ!!」
二人は高い屋根から急降下した。しかし、すぐに小さい竜の背に着地した。不思議な感触がした。うろこだろうか。硬いのだが、弾力があって乗り心地がよい。
小さい竜は、連なる屋根の遥か上を優雅に飛んでゆく。落ち着いてきたところで、ノエルは急に笑い出した。
「すごく面白いわ!刺激的ね!」
青年は、驚いたように目を丸くした。
「そうね、まずはお礼だわ。助けてくれてありがとう」
ノエルは彼の真っ黒な瞳を見つめて、そう言った。
「それで、この竜は何なの?私、初めて見た。まさか、本物の竜?神話でしか見たことないわ。ルカッサにはいないもの。そして貴方のその真っ黒な瞳や肌も」
ノエルは、興味津々だった。竜は、空を泳ぐように気ままに飛んでいる。
「おいおい、落ち着け」
「落ち着いてなんかいられないわ。私、こんなに刺激的な日は初めて!ね、早く。この子の名前は何ていうの?」