オリオールの乙女
ノエルの胸はまだ、どきどきしていた。
マジャッラは、ルカッサの大時計台をぐるりと回遊した。時計台の守り人のおじさんが、こちらに大きく手を振っている。
「ボドワンさんだ」
彼はそう言うと、おじさんに向かって大きく手を振り返した。
「知り合いなの?」
「ああ。たまに寝床として貸してもらっている」
それを聞いたノエルはびっくりした。
「時計台で眠るの!?」
「そうだ。時計台の中は知っているか?いろんな歯車のからくりでいっぱいさ。時計台の鼓動みたいなものが伝わってきて、中で眠るのは最高なんだ」
「……素敵ね」
ノエルは頬を紅潮させた。それを見た青年は、横目で笑ってみせた。
「行きたいか?」
「ええ……とっても」
「そうしたら、今度連れていってやるさ。プリンセスが下手に外出したら、大変だからな」
彼は茶目っ気たっぷりにそう言った。ノエルも、つられて笑顔になった。
「ぜひ。お願いするわ」