オリオールの乙女

ノエルの胸はまだ、どきどきしていた。

マジャッラは、ルカッサの大時計台をぐるりと回遊した。時計台の守り人のおじさんが、こちらに大きく手を振っている。

「ボドワンさんだ」

彼はそう言うと、おじさんに向かって大きく手を振り返した。

「知り合いなの?」

「ああ。たまに寝床として貸してもらっている」

それを聞いたノエルはびっくりした。

「時計台で眠るの!?」

「そうだ。時計台の中は知っているか?いろんな歯車のからくりでいっぱいさ。時計台の鼓動みたいなものが伝わってきて、中で眠るのは最高なんだ」

「……素敵ね」

ノエルは頬を紅潮させた。それを見た青年は、横目で笑ってみせた。

「行きたいか?」

「ええ……とっても」

「そうしたら、今度連れていってやるさ。プリンセスが下手に外出したら、大変だからな」

彼は茶目っ気たっぷりにそう言った。ノエルも、つられて笑顔になった。

「ぜひ。お願いするわ」

< 14 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop