オリオールの乙女
マジャッラは城のノエルの部屋のベランダで降ろした。
「ようし、大丈夫だな」
彼はノエルに貸した手を、ゆっくりと離した。彼の浅黒く、たくましい手が離れていくのを見て、ノエルは少し沈んだ顔をした。それを見た彼は言った。
「また迎えに来るさ。それまでやんちゃはほどほどにしておけよ」
青年は優しく微笑んだあと、ノエルの頭をそっと撫でた。
「ほんとう?」
「本当だ。ほら早く、俺といるところが見つかったら大変なことになる」
彼はそう言うと、マジャッラに跨った。
「ごきげんよう、プリンセス」
「あ……、あなたの名前を!」
ノエルが言い終わらないうちに、マジャッラは空高く、手の届かないところまで飛んでいってしまった。
「行ってしまわれたわ……」
ノエルが小さくため息をつくと、部屋がコンコンとノックされた。
「ノエル様?よろしいですか、舞踏会の支度がございますよ」
「いいわ。入って」