オリオールの乙女
「ほら、これが今夜のドレスですよ。美しいでしょう」
マーレが言うと、若い召使いがドレスを広げた。ドレスは金色に近い黄色で、ちりばめられた宝石がきらきらと美しく輝いた。
「おてんばプリンセスのように明るい色で、ノエル様にはぴったりね」
マーレはわざとウインクしてみせた。ノエルは、困ったように微笑んでみせた。
「ドレスは嫌いよ。苦しいもの」
「そんな甘えたことを言っていられるのも、今のうちですよ」
そう言うとマーレは、ノエルのコルセットを一気に締め上げた。その息苦しさに、ノエルは目をぱちくりさせた。
マーレがドレスを着付けている間、若い召使いがノエルの髪をセッティングし、化粧をほどこした。最後に真っ赤な口紅をひくと、頭には華奢なティアラが飾られた。
「ほうら、完璧。ノエル様、笑って」
鏡の中で、麗しいプリンセスは口の端を少し上げてみせた。
「では、向かいましょう。今日はディディエ様の大切なご生誕の日ですからね」
今日は母の誕生日だった。今夜の舞踏会は、大規模なものになるだろう。