オリオールの乙女
ノエルは二人の召使いと共に部屋を出た。
長い廊下には褐色の絨毯がひかれていて、両脇の壁にはルカッサ中の巨匠たちの絵が額縁に入れられ、誇らしげに飾られている。
額縁は金のめっきがはげたり錆びたりしていて、歴史を感じさせるとともに、レトロな雰囲気を醸し出していた。
すれ違う召使いたちが、頭を下げてゆく。ノエルは、真っ直ぐ前を見据えて廊下を歩く。それが、姫に求められる振る舞いだった。
「ごきげんよう、プリンセスノエル」
すると、一人の黒髪の女性がこちらへ近づいてきた。年は五十過ぎ。しかしそれを感じさせない派手な化粧、赤いルージュ、高く巻いた髪、しゃんと伸ばした高い身長。
ノエルは一目でそれが誰か分かり、顔をしかめた。
「ごきげんようバルバラ」
「今夜は待ちに待った舞踏会ね。いいわよ、ノエル、その姿、まるでお花畑を歩くよちよち歩きのバンビだわ」
そう言うとバルバラは高く笑った。ノエルは彼女が嫌いだった。
「それでは、また後ほど」
バルバラは赤い唇をいやらしく歪ませると、その場を去った。