オリオールの乙女
「ノエル様、お気になさらず」
マーレはそう言ったものの、明らかに不満そうな顔をしていた。
「あの下馬女」
若い召使いがそう言ったのを、マーレは叱った。
バルバラはディディエの姉であり、ノエルの叔母だった。長女であるバルバラが女王に選ばれなかったのは、バルバラが黒魔術に没頭する、如何わしい女性だったからだった。
城内でも彼女の悪い噂は絶えなかった。城のどこかの地下室には、バルバラ専用の部屋があって、誰もその実態を知らないということだった。
もし彼女の秘密を知ったならば、彼女の黒魔術で命を落としてしまうのだとか。
他にも、満月の夜、若い女性をさらって生き血を吸い取ったり、魔術で呪いのフルーツを作ったり、怒りで雷を落として家を燃やしたりなど様々である。
気にしては駄目。ノエルはそう言い聞かせた。
しかし、バルバラとディディエが姉妹など、信じられないものだった。だって、二人は本当に正反対だったからだ。
対の存在。光と闇、太陽と月、そんな感じだ。