オリオールの乙女
まず頭に入れておいてほしいのが、ルカッサ王国は女王が政権を握っている、ということだ。
彼女らは女王に即位すると、男性の名を名乗った。男名を名乗る理由は様々あるが、他国での男子相続の風潮に引けをとらないため、という説が有力である。
そして、当時の主導者はディディエという美しい女王であり、ノエルはディディエのただ一人の愛娘だった。
ノエルの髪は絹のように細く繊細で、シルバーに輝いていた。母ディディエから受け継いだものだった。
肌は透き通るほど白く、芸術大国ルカッサにも彼女の肌のような美しい陶磁器を作れる者はいなかったという。
頬は薄くピンク色に色づいていて、その唇はラボという果物のように赤かった。
「母上、あのお話をして」
ノエルの幼き頃、寝床に入るといつも彼女は口癖のようにねだったのだった。