オリオールの乙女
「マーレ……?」
マーレは、弱弱しい力でノエルの腕を掴んだ。
「ディディエ様が……」
「母上が?」
マーレは、もうそれ以上何も言えなかった。ノエルは本を放り出すと、ディディエの部屋へと真っ先に向かった。
ディディエの部屋には、医師と、数名のシスターが深刻な表情でベッドを囲んでいた。
そのベッドに横たわっていたのは、青白い顔をしたディディエだった。
「母上!」
ノエルはディディエの側に駆け寄ると、その場に屈み、ディディエの顔を覗き込んだ。
ディディエは、か細い息遣いで呼吸するのが、精一杯のようだった。
「ノエル……」
彼女の透明な肌は、青白く、生気がなかった。
「何があったの?」
ディディエは、娘の頬を冷たくなった手で撫でた。ノエルは、母の手をしっかりと握った。