オリオールの乙女
「ノエル……あのペンダントはどこに?」
ノエルは、ペンダントを自分の首につけてないことに気付き、少し悔やんだ。
「私の部屋よ」
それを聞いたディディエは、ほっとした顔をした。
「良かったわ。ノエル、あのペンダントを……誰にも渡してはダメ。分かった?」
ノエルは、しっかりと母を見つめ、頷いた。
「良い子ね。……いい?ノエル。……ルカッサはね、美しい国よ」
「ええ、もちろん知ってるわ。ルカッサを、私とても愛しているもの」
ディディエは、澄んだ目で微笑んだ。
「このルカッサは……誰のものでもないの。誰かの手で、ルカッサを作ろうとするのは……無理なことなのよ。
分かる?お前はいい子だから……必ず答えを見つけてくれるわ」
ディディエは、ノエルの髪を優しく撫ぜた。
ノエルが幼い頃、母の細く美しい指が、彼女の髪を毎日梳いてくれたのと同じように。