オリオールの乙女
ディディエの葬儀の日、雨が降り続いた。
彼女が生まれた日も、雨だったという。死んだ日も雨だった。
しかし、それは濡れた涙を拭ってくれるような、彼女らしい温かく、優しい雨であった。
ノエルは、母が死んでから街に出るのをやめた。
召使いたちは、やっとプリンセスの自覚が芽生えたのだと喜んでいた。
しかしマーレだけは、ノエルの心の闇に気がついていた。
ノエルは、街に出るのを辞めた代わりに、足繁くワドレーヌ大聖堂に通った。
ディディエが死に、シャルロワ城には明らかに異変が起きていた。
次期女王に、娘であるノエルは早すぎると異論が飛び交う中、バルバラが大きな勢力を蓄え、候補に乗り上げてきた。
バルバラだけではない、我も皇族と名乗りを上げる女たちも出てくることで、その権力争いが激しくなっていた。