オリオールの乙女
廊下をすれ違うたび、高飛車な女たちがお互いを挑発するように見下して、鼻で笑い合う光景が当然のように見られた。
召使いたちの間でさえ、派閥が出来上がっていた。
もう、険悪なムードのシャルロワ城にはうんざりだった。
ノエルは逃げるようにして、大聖堂に塞ぎ込んだ。
黒いファジールが現れて以来、少しずつ変わり始めたものが、大きな変化の波を作ろうとしていた。
母が死に、ノエルはこの城の中で自分の良き理解者をなくし、どんどんと存在そのものまで小さく消えかけようとしていた。
以前の明るくておてんばなノエルは、どこにもいなかった。
ルカッサには沢山の伝説が残っていて、その中に『アルドネの洞窟』というものがある。
昔、この豊かなルカッサの陽気な音楽に誘われて、一匹の魔物が天界より舞い降りた。名はジュラーム。